兵庫県文書問題第三者調査委員会報告

2025年6月9日

五百旗頭元理事長の逝去について

片山元副知事が令和6年2月29日、五百旗頭氏に機構に関する人事案を伝えたことは事実。五百旗頭氏がその案の一部について再考を求めたこと、人事の内容を快くないと思うと述べていたことも事実です。五百旗頭氏が3月6日にお亡くなりになったのも事実です。しかし、人事案についての話し合いと五百旗頭元理事長の死亡との間に医学的な直接的の因果関係を裏付ける資料はありませんでした。したがってその間に直接の因果関係があったとは認めません。そうは言っても人事案についての話し合いが、五百旗頭氏に通常を超える大きな心理的負荷を与えたことは想像に難くありません。県に貢献された方には、敬意を払うべきです。外郭団体の人事は県がその政策に基づいて行うものですから、その是非には言及しませんが、人事改革を行いたいのであれば、丁寧に進めるのが適切であったと言うのが我々の意見です。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=XP_IH6O4UFWaFovS&t=218

令和3年度の知事選挙について

文書では令和3年7月に行われた兵庫県知事選挙について一部の職員が公職選挙法や地方公務員法に違反して関わったのではないかとの指摘がありました。しかし、その事実は認められません。関わった職員がその後異例のスピードで昇任しているとの指摘がありますが、人事にまつわる問題には本調査委員会は関与すべきではないと考えます、人事が不相応であるとも認定しませんし、論功行賞の結果だとも認定しません。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=doGjOvj9hthH7syj&t=311

令和7年度実施予定の知事選挙の事前運動について

斎藤知事が令和5年の下半期以降県内各地の商工会、商工会議所を訪問したことは事実です。しかし、その際に支援や投票依頼を行ったという事実は認められません。もっぱら予算や施策について説明をし意見交換をするのが目的であったと思われます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=L72-0VkJfJmpHHkZ&t=359

贈答品が多かった

コーヒーメーカーについて

斎藤知事が県内の企業を視察した際にコーヒーメーカーをお土産として渡されようとしたこと、周囲に報道関係者がいて、「受け取るんですか?」と発言したこと、知事は受領を辞退したこと、その後県庁内のある随行者が所属する部にコーヒーメーカーとトースターが届いたのは事実です。しかし、商品は知事個人が受け取ったものではありません。随行者に秘書課に届けるよう指示したこともありません。その意味でコーヒーメーカーの指摘は主要な部分が事実ではないと判断しました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=pBuKtxhN3rcaIoKa&t=401

ロードバイクについて

ロードバイクについては、県が無償で借り受けたことは認められましたが、知事が個人への贈与は認められませんでした。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=pVMaht093oF4N4zk&t=462

ゴルフクラブ

ゴルフクラブについては、製造工程を示す仕掛品と完成品1本が県に贈与され知事室に展示されていました。これも知事個人への贈与とは認められませんでした。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=rU9ZCDcGgFqMF9yu&t=472

特別交付税の算定で見返りが行われたとか総務省の出向者が冷遇された事実も認められません

スポーツウェア

県がメーカーからウェアや靴の提供を受けたのは事実です。しかしこれも知事個人への贈与ではありません。ウェアは県庁内で保管されており、公的な行事以外で知事がこれを着用した事実は認められません。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=1QbDpZnhiCCMuIPs&t=500

県北部のスキー場を公式訪問した際、スキーウェアの提供を受けられないか打診

職員が協会関係者にスキーウェアの提供を受けられないか打診したことは事実です。打診先が「購入してもらうしかない」と答えたためにウェアの授受は行われていません。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=dJA1j_1rpttZXUR2&t=539

竜山石の湯飲み

竜山石の採石場を見学した際、竜山石の湯飲みが贈与されました。これも県への贈与であって知事個人の贈与ではありません。湯飲みは知事室に置かれ県の特産品として来客へのお茶の接待の際に利用されています。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=pj_uYRVPU0OTKSSb&t=567

紅ズワイガニ

知事は県北の漁業協同組合を視察した際、お土産に紅ズワイガニ二杯を受け取り自宅に持ち帰りました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=1LMuT5C7AZOSfZlJ&t=593

贈答品まとめ

コーヒーメーカーやアイアンヘッドの仕掛品、スポーツウェア、竜山石の湯飲みなどは県に贈与されたもので、斎藤知事個人に贈与されたものではありません。出張先で農産品や特産品を個人宛に贈与されたことはありますが、社会的儀礼の範囲内のものと考えられました。これらを贈収賄と認定することは出来ません。

しかし、スキーウェアや竜山石の湯飲みは知事の意向を先読みした職員が県の側から贈与を求めたものと認められました。

紅ズワイガニについては、一緒に随行した職員の方は受領を辞退されました。視察先の組合とは利害関係が無いとは言い切れない状況があります。これらについては他から疑念を招くことの無いよう慎重な行動が必要であったと思われます。

尚、贈答品の問題については、その後、内部公益通報を受けてガイドラインを策定するなどして物品受領のルールが明確化されたことはご承知の通りです。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=uw29MZp4jan1pWfO&t=610

政治資金パーティーを巡る問題

斎藤知事の後援会が実施した政治資金パーティーに信用保証協会の役員が関与した事実はございます。しかし、指導員の削減とか補助金カットをほのめかした事実は認められませんでした。その活動に県の現役職員が関わったと言う事実も認められません。ただし、信用保証協会の幹部が、その名刺を配ってパーティー券販売活動の一部を担ったことは協会の公的イメージや業務の中立公平性に対する信頼を傷つけかねません。幹部には慎重な行動が求められたと考えます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=sBB9Os9Lunif10GC&t=701

プロ野球球団優勝パレード

補助金は令和4年度は12億円。5年度は8億円の予算で制度が行われました。令和6年については、廃止するかどうかと言う話しがありましたが、制度は続けようとことになり、11月9日産業労働部が約1億円の予算要求いたしました。これに対して11月14日に片山元副知事から「1億円では少ないんじゃないか、4億円程度で設計するように」と言う指示がございました。その意を受けて11月16日に産業労働部は再度の予算要求。今度は4億円で行っております。17日には財政部の部長において3億7千5百万円の予算査定が行われました。その後11月21日に知事査定で4億円に上がった。これが経過です。

他方パレードについて申し上げますと、パレードについての庁内のプロジェクトチームが発足したのが9月22日です。10月18日から協賛金とクラウドファンディングの募集が始まったのですが、低調だったので、10月下旬から企業の協賛金の依頼を強化いたしました。その後11月14日。大阪府から兵庫県に「このままでは足りない。2千万円頑張ってくれ」と要請が入りました。しかし11月17日、ここが微妙なところですが、午後3時前には資金調達の見通しが尽きました。その意味で「もう無理に資金集めはしなくて良い」これが11月17日の3時前の状況でした。しかし、この時点では既に補助金は4億円に近い額3億7千5百万円の査定がなされておりました。ところが同じ午後3時台の後半になり大阪府から兵庫県に「さらにあと2千万円頑張ってくれないか」と言うふうな話がありました。

これを受けて斎藤知事自身も企業に協賛金の拠出を求めましたし、片山元副知事も11月21日にある信用金庫の理事長に「信用金庫全体で協力してくれないか」と言うふうな要請を行いました。そのお二人の話し合いの中で、何とか信用金庫全体で2千万円の協賛金を拠出しようと言うふうな話しがありました。その話し合いを受けて、ある信用金庫の理事長が、県下の信用金庫に電話をし「分かりました」と言うふうなことで決まったと言うのが経過です。

そして、11月23日にパレードが実施されました。各信用金庫から実際に協賛金拠出の申し込みがあったのは、11月24日以降であります。入金があったのもそれ以降であります。この点が疑惑を招く原因になりましたが、時系列ではそのような経過でございました。

ただし、これらの事実は、我々が大阪府と兵庫県の職員間のメールのやりとりなどを細かに分析して初めて分かったことでございます。

片山元副知事は補助金と協賛金の両者に関係しておました、かつ決定的とも言える重要な役割をいたしました。ご本人からすると時系列を良く分かっていらっしゃいますから、この二つは別の問題だと理解できると思いますが、第三者から見ればどうでしょうか、外部から見れば関連があると見えてもおかしくないと思いました。

この件については、背任罪で告発がなされているようですから、最終的にはその結果を待たなければなりません、しかし、補助金の予算執行は、金融機関の中小企業に対する伴走支援についての報告書を提出した後でなければ金庫に補助金は支払われません。その意味で文字通りのキックバックはあり得ません。これを見返りとしても先ほど述べた時系列からすると、本調査委員会としては、両者にはその関係は無かったのではないかと考えております。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=T_nbnC0xNYbBmVDr&t=758

担当職員の労務環境

本件文書が触れる職員の方は協賛金集めに携わったものではありません。私たちは、協賛金と補助金は別のものと考えております。したがって、その職員の方が不正に巻き込まれたと言うことは無い。その指摘は誤りだと思います。

しかし、このプロジェクトは例のない大規模な事業でした。その職員は普段とは異なる内容の業務に従事し、大阪府や事業者との間で困難な調整を行わなければなりませんでした。

パレード開催直前1ケ月の時間外勤の務時間は130時間超に及んでいます。大規模で普段とは異なる内容の業務に長時間従事した職員の心身には極めて大きな負荷が掛かったと思われます。

大阪府とともに関西のプロ野球球団の優勝を祝うと言うことは、兵庫県にとっても有益な事業だったと思います。しかし、資金調達含め県は企画全般について無理の無い現実的な方針を取ることが望ましかったのではないでしょうか。

その中で、職員の労務管理は十分注意を払っていただきたかったと考えます。この点については、出来れば検証が必要なのではないかと考えております。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=qUvv4FrMVuENWByC&t=1127

パワハラについて

まず、調査の対象ですが、この文書には幾つかの例が挙がっています、しかし、我々はこの例は、幹部や知事にパワハラがあったと指摘するものであって例にすぎないと考えました。実際、百条委員会のアンケートや我々のホットラインには他にも多数のパワハラがあったんじゃないかと言う情報が寄せられました。

この件についてパワハラかどうかを考えるに当たって、2つ基本的視点を持つことにしました。

1つはパワハラの問題を当事者の関係だけで捉えないと言うことです。人にはパワハラに対する耐性、耐える力に違いがあります。人によって「これはパワハラだ」「パワハラでない」と考える線引きの基準も異なることでしょう。

そうだとすると、相手の方が「パワハラでない」と感じている言っていると言うだけでパワハラかどうかを判断するのは適当では無いと考えます。

パワハラがあると周囲の職員が委縮したりします。就業環境が害されれば職員の士気は低下します。士気が低下すると県政が停滞します。県政の停滞によって被害を被るのは県民です。

そのような視点でパワハラを見ないといけないと言うのが第1の視点。

第2の視点は、パワハラには程度があると言うことです。暴行罪とか傷害罪とか犯罪になるようなパワハラもあります。民事で訴えられて損害賠償が認められるようなパワハラもあります。それから司法問題にならなくても懲戒処分を課すべきと言う風な程度のパワハラもございます。そこまでは至らなくても関係を分けた方が良い、切り離した方が良い、指導をした方が良いと言う風なレベルのパワハラもあるでしょう。

目指すは、パワハラの無い社会、職場です。そうだとすれば損害賠償が認められるかとか犯罪になるかとか言うレベルでは無く、いかに風通しの良い職場を作るか、そのためにこの行為はどう見るかという点でパワハラを見るべきでは無いかと言う風に考えています。それが第2の視点です。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=Ik6tuPDkK5M4U8tH&t=1223

20m歩いたことで叱責した

この出張先の入り口に向かうエントランスの地下には埋蔵物がございました。恐らく遺跡では無いかと思われます。エントランスが車両侵入禁止なっていたのは、その埋蔵物を保護するためです。重量物が乗ってはいけなかったからです。

しかし、斎藤知事は車が車止めの前で止まるとロジが不適切であると考えて車から降りて理由を聞くこと無くいきなり車止めを持ち上げるしぐさをして担当者を叱責しました。

自動車が進入禁止とされていたたことには客観的な理由がありますから、これは必要性を欠く指導です。

叱責は会議の直前に行われました、しかし、その職員は会議において重要な役割を担っていた方です。会議直前に心をざわつかせる叱責は指導方法として相当性を欠くものと考えました。

この話は広く県庁内に広まりました。そしてロジに気を付けないと知事の怒りを買うとたくさんの職員を委縮させました。以上の点を考えこの行為をパワハラと判断します。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=DvlptN7sFr1SH_xi&t=1413

万博の事業の知事レク

斎藤知事は大阪府が万博の目玉にし知事も重点を置いていた事業について知事レクを受けることになっていました。ところがレクの日の朝、新聞が事業の内容を報道しました。すると知事は「この記事は何だ、この事業は自分の直轄である、勝手にやるな」と強く叱責して職員が事情を説明しようとしても聞こうとしませんでした。

そして、「やり直し」と述べて協議を打ち切ってしまいました。

報道は、新聞社が独自にその価値を認めて行ったもので、職員が依頼して記事にしてもらったものではありません。この叱責は理不尽と言わなければならないと思います、また、説明を聞かず一方的に叱責し、話し合いを終了させるのは方法としても相当ではありません。この件も、「知事は理不尽に怒ることがある」と多くの職員を委縮させました。私たちはこの件もパワハラと認定しました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=-ws4qNJjzSbBHcAV&t=1514

県立美術館休館

知事は令和5年7月20日。県立美術館が4日後から約1ケ月半休館することを新聞の電子版で知りました。そしてその深夜翌日の0時46分です。数回に渡って複数の側近幹部職員にチャットを送り「美術館が長期に渡り休館するとは一言も聞いていない、知事が報道で知るのはおかしいではないか」と指摘しました。そして翌日朝一で教育長と担当部長を知事室に呼ぶよう指示しました。また「こんなことでは美術館の予算措置は出来ません」と強い措置を取ることを示唆しました。

しかし、メンテナンスは万博との関係でどうしても必要なものです。他の展示企画との関係で修理を夏休み期間にすることもやむを得ないものでした。

メンテナンスについては令和4年度の補正予算で議決されていました。美術館のカレンダーには4月の時点で休館のお知らせが掲載されています。

しかし、知事は教育長たちが知事室にはいると、事情を聞くこと無く「聞いていない。どうして夏休みに休館するのか?発表が急過ぎる」と叱責しました。そして、事情を説明しようとしても、聞こうとしませんでした。

教育長は「すみません」と何度も謝るしかありませんでした。

教育委員会は独立した行政委員会です。知事に指導権限はありません。事情を聞かずに叱責するのは、相当ではありません。予算措置をほのめかすことも不適切です。

この件も一定範囲の職員が知ることとなり委縮をさせました。私たちはこの行為もパワハラと判断しました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=XJD3YtLPZ0zMseb7&t=1586

大阪湾内の埋め立て事業

令和3年9月。大阪湾内の埋め立て事業に関する新聞報道を見て、担当職員を知事室に呼び事情を聞くこと無く「県として意思決定していないことを先に出すのは良くない。許せない」と述べて机を叩いて叱責しました。

しかし、新聞は県が決定していないことを報道したものではありません。マスコミは独自に報道価値を認めて新聞に掲載したものであって、職員が依頼して報道してもらったものでもありません。誤解に基づいて叱責したものですからこの行為は理不尽です。また、机を叩くのは相手を威圧する行為であり、方法としても適切を欠きます。この件は知事が就任して1ケ月程の時に発生しました。そして、「今度の知事は事情も聞かずにいきなり怒る。しかも机を叩いて怒る。」と庁内に噂が広まりました。これは庁内の職員を畏怖させました。知事はこの件については反省の意を示しています。私たちはこの件も必要性のない理不尽な方法としても相当性を欠く叱責であり、多くの職員を委縮させたとして、パワハラであると認定します。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=eqcRiob-r20_SSbz&t=1712

SDGs選定書授与式

兵庫県は令和5年5月22日、令和5年度SDGsの未来都市に選定されました。また、その事業がモデル事業に選定されました。表彰式は5月22日の月曜日に東京で行われる予定でした。知事は5月19日の金曜日夜10時を過ぎてから「東京での授与式に報道機関が来ないのはおかしい、問題である。何とか明日追加対応して取材に来るよう交渉して欲しい」と呼びかけました。担当幹部職員は翌土曜日報道各社と交渉しましたが、良い返事を得ることは出来ませんでした。そこで、月曜日は職員を東京に派遣して動画を撮影する、そして報道各社に持ち込むと言うことにしました。しかし、マスコミはそれぞれの社においてニュースバリューの有無とその重要度を判断して、取材するか否かを決めます。また、報道するかを決めます。相手の決めることは職員が必ず実現できることではありません。これは高すぎる要求だと思います。また、夜間休日にチャットを送り、業務を行うことを求めるのは行き過ぎだと思っております。この件も我々はパワハラに該当すると考えました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=BjmIjq3Dyi3KEbEa&t=1804

はばタンPay

はばタンPayについては第一回のキャンペーン用にうちわを用意しました。しかし、知事協議の際、知事はうちわを見て、ため息をつき、舌打ちをしました。「いったに何がいけなかったのだろう」と思っても職員はなかなか分かりませんでした。結局これは、うちわに知事のメッセージが入っていない。顔写真が入っていないことだと言うことが分かりました。そこで、担当職員は、うちわを差し替えることを考えましたが、時期的に難しいと言うことで、知事のメッセージと顔写真のはいったうちわを追加発注することになりました。

このような、うちわを作ることは、事前に要求されていたのであれば、担当職員も考えることが出来たと思います、しかし、そこまで気をまわして行動するのは無理な要求ではないかと思います。ため息や舌打ちで考えさせるのは人を不安にさせる行為です。方法としても不相当だと思います。この件も庁内に広まり、職員を委縮させました。私たちは、この行為もパワハラに当たると判断しました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=HGkY8zzmeLzHqywa&t=1909

夜間休日を問わないチャット

兵庫県では令和5年4月から幹部職員はチャットで知事とやりとりを行うようになりました。令和5年12月までの9ケ月間のチャットを我々は点検しましたが、平日午後8時以降知事と職員がチャットのやり取りをした回数は38回です。そのうちには日付が変わってから行われたものもあります。一地番遅い交信時間は午前3時40分です。土日祝日のやり取りも16回を数えました。そのうち7回は午後8時以降に行われています。これらは通常の業務に関してのチャットのやり取りです。台風や大雨災害の時、それから淡路で豚熱などが発生しましたが、そのような特殊事情がある時は、上記以外でも夜間休日にチャットにより情報のやり取りが行われました。職員は心身が健康ではじめて良い仕事が出来ます。そのためには、プライベートな時間を持ち、休息することが不可欠です。しかし、チャットでいつでも連絡がなされると、本来働く時間とプライベートな時間の区別が曖昧になります。

デジタルで繋がっていること自体による負荷やストレスも無視出来ません。夜間休日に行われたチャットのやり取りは、職員のプライベートな生活時間を侵害するものです。本人の自覚はともかくとして、客観的に見て、これは心身に大きな影響を与えるものであり、幹部職員を疲弊させたことに間違いありません。私たちはこの行為もパワハラに該当すると判断します。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=83k5E5jYaSA1fIMQ&t=2007

ココロンカード

これはパワハラの問題ではありません。兵庫県では小中学生が美術館等を無料で入場出来るココロンカードを発行して新小学1年生や他府県から転校して来た児童生徒に配布しています。令和3年度まではカードの裏側に井戸前知事の名前がありました。令和4年4月に配布されたものには知事の名前はありません。令和5年4月に配布されたものには斎藤知事の名前が入っています。知事は、令和5年度に既に発行されているカードの知事の名前が井戸氏であることを問題にしました。「新小学1年生に配布するものでは無く、全学年についてココロンカードをやり替えてはどうか」と言う風な示唆をしております。百条委員会ではそのような示唆はしていないとしておられますし、我々のヒアリングでも「逐次替えて行ったら良い」と言っただけだとおっしゃっています。しかし、そうであれば既に行われていたことです。あえてするのは全学年も替えて欲しいと言う示唆であったと我々は受け止めました。例年のココロンカードの発行費用は20万円です。しかし、令和6年4月の発行費用は160万円掛かりました。この点は問題なしとしないと考えます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=9ol3dw4OjLerS-bf&t=2119

公益通報について

これが公益通報の観点からどう考えるべきかと言うことが百条委員会でも問題になっておりますし、世間でも問題になっております。公益通報者保護法は3つ法令で考えるべきものがあると思います。一つは公益通報者保護法そのものです。もう一つは保護法11条4項に基づいて策定された指針です。この指針は法律に基づいて策定されたものですから、法定指針であり法律と同じ効力があるものと考えます。そしてもう一つが兵庫県が定めている公益通報制度についての要綱です。

公益通報者保護法は、犯罪行為、刑事罰や過料の対象になる行為についての通報を保護するものです。しかしそれだけでその目的が達成出来るものだとは思えません。兵庫県の要綱はこれをさらに一歩進めて県政の信頼に重要な影響を与える事実・事項などについても公益通報の対象になるとしています。

これは端的に言うとパワハラなども公益通報になると言うことだろうと思われます。これが三つの法令です。

一番問題になるのは、まずは本件文書が公益通報に該当するかどうかだと言うことだろうと思います。保護法は先ほど申し上げた通り、犯罪行為その他について不正の目的では無く役務提供先等に通報した時に通報者を保護する法律です。そこで、公益通報にあたるかどうかを考える上に当たっては、通報対象事実、刑罰の対象となる事実かどうかと言う点と不正の目的の有無と言う点が大きな問題点になろうかと思います。

まず、通報対象事実に当たるかどうかですけども、五百旗頭氏の死去の問題。公選法の問題。政治資金パーティーの問題などは、そもそも刑罰に関係するものではございません。この件で問題になるのは、事項4、贈答品。これが贈収賄罪になるかと事項6、補助金と協賛金拠出。これが背任罪になるかどうか。そして、事項7、パワハラ。パワハラは直接には刑法犯になるものでは無いですけども、程度が酷い時には暴行罪・傷害罪も構成することがあり得る。と言うことでこの3つであろうと思われました。本件文書の中にはこの3つがありましたから、公益通報対象事実の要件は一応満たしていると見るべきでしょう。

不正の目的の有無ですけれども、本件文書や公用パソコン内に残された文言などからは、局長が斎藤知事や片山元副知事ないし側近の幹部職員に対して不満や批判的感情を有していたことが伺えます。しかし元局長は、マスコミ送付した文書や百条委員会に提出した陳述書などで、本件文書を作成して配布した主要な目的は、「当時の県職員の間で斎藤知事や片山元副知事及び側近の幹部職員の言動にについて、不満や不信が話題になっていた、これを問題として、代弁し反省すべき点は改めてもらって風通しの良い組織になることを願う」このようなことも目的の一つとして挙げております。

保護法はもっぱら公益目的でなされた通報のみを保護するものではありません。本調査委員会は、本件文書の作成配布には種々の目的が混在しているとは考えました。しかし、不正の目的で行われた通報では無いとも判断いたしました。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=vD_wJWemGv5LBDoq&t=2236

利害関係者の関与

公益通報に当たるとするならば、それに利害関係者が関与しても良いのでしょうか?保護法と11条4項の定める指針は事案に関係する者を当該公益通報の対応業務に関与させてはならない旨を定めています。

ただし、明確に指摘しているのは、内部公益通報についてです。外部公益通報がこれに同じく保護されるかどうか、そのような要請が働くかどうかと言うことは別途考えないといけないですけども、適正的手続きを保証するこにより、通報者を保護すべきと言う要請は外部公益通報にも通底します。

従って、外部公益通報もその趣旨は尊重されなければならないと考えました。

しかし、本件では文書で名前の挙がっていた、斎藤知事、片山元副知事そして側近の幹部の方々が最初から、そしてかなり遅くまで文書の対応に強く関与しました。

文書に則して見ますと、事項1、五百旗頭氏の死去にまつわる問題は、片山元副知事と五百旗頭氏が良く知っていることです。この文書では、死去の前日に会ったとされていましたが、実際に片山元副知事と五百旗頭氏が会ったのは2月29日でした。文書は間違っていると片山氏が考えることは無理からぬことです。

事項2と事項3の選挙運動に関することは関係者であれば「私は、こんな行動はしていない」と簡単に分かることです。

事項5の政治資金パーティーの問題も同様です。

知事は個人として物品の授与は受けていませんから、4の贈答品の問題も「これは違う」と否定することになります。

事項6は、片山元副知事が自分で関与しておられますから、「これは違う、関係ないぞ」と言う風になります。

最後に残るのは事項7ですが、パワハラを自分でパワハラかどうか判断出来るでしょうか。パワハラをしている人が、「これはパワハラだ」と意識していれば、このような行為をする訳がありません。パワハラか否かは第三者、他の人が判断すべきことだと考えます。そして、チャットのやり取りでお分かりの通り、側近の幹部の方々はむしろパワハラで被害を受けている方々です。しかし、誰一人これを「パワハラだ」と言う風に考える方はいらっしゃいません。そのような方々のなかで、これをパワハラだと考えることが出来るでしょうか。

そうだとすると利害関係者が関与すれば、「これは違う文書だ。事実では無い、むしろ誹謗中傷だ」と言う風な方向に行くのは当たり前なことです。

そのようなことを避けようとするのが、利害関係者の関与の排除の趣旨だと思います。本件は正に利害関係者が関与してはいけなかった典型例ではないかと思われます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=LBsBZ2LvXvxqxfh7&t=2547

利害関係者の関与は極めて不当

利害関係者の関与を排除すべきと言うことは内部公益通報について明言されていところです。しかし、その制度の趣旨を考えれば、本件で利害関係者が関与したことは制度趣旨に反するものであって、極めて不当なものではないかと考えるのが私どもの意見であります。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=fKE8Gb49fvcQa04w&t=2774

通報者探索行為

保護法11条と指針は、通報者を公益通報に該当する事実であれば通報者を探索してはならないと定めています。しかし本件では、3月21日のメールチェックに始まり25日の西播磨県民局に臨んでの局長への尋問など、通報者探索行為が行われました。これは違法な行為です。

知事はこの点について「県内外の企業に対する名誉棄損的なことが書かれていた。また、職員についても実名を挙げて、これを非難する文言があった。これがさらに広がらないようにするためには、通報者を特定する必要があった。」このようにおっしゃっておられます。確かに指針はやむを得ない場合には通報者を探索をすることが出来るとしております。しかしこれは公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施出来ないなどの場合と言う限定が付いています。知事がおっしゃる事情は、やむを得ない場合に当たるとは思えません。むしろ、これ以上広がらないようにと言うことは逆にさらなる公益通報を防ぐと言うことであって、法の趣旨に反するご主張でないかと言う風に考えたのが我々の判断でございます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=94juoRFqrZX8SJTe&t=2801

公用パソコンの引き上げ

公用パソコンの引き上げが行われました。これは違法な通報者探索の結果として行われたものですから、我々はこれを違法だと考えます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=uDI3VMTUzTKuTBHJ&t=2925

不利益取り扱いについて

不利益取り扱いの問題について申し上げます。本件では、3月27日に退職保留と言う人事処分がありました、これは一つの不利益な取り扱いだろうと思います。

もう一つ、5月7日に懲戒処分が行われました。これも不利益取り扱いでございます。不利益取り扱いをされないためには、公益通報に該当するだけでは足りません。真実相当性が無ければなりません。では、先ほど申し上げた各案件について真実相当性が認められるか、結論だけ申し上げます。我々としては、コーヒーメーカーの贈与については真実相当性があったと考えました。また、優勝パレードの件についても真実相当性があったと考えました。その理由は、片山元副知事から見れば両者は全く違うことでしょうが、第三者の目から見れば、これには関係があると見えても不思議では無いからです。事実、我々調査委員会もメールを詳しくチェックするまで、その両者の関連を理解することが出来ませんでした。そうだとすればこの件については真実相当性があると言う風に認められました。

パワハラについては暴行罪、傷害罪に該当するものではございませんから、これについては真実相当性までは認められないだろうと言う風なのが我々の判断でございます。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=yvqSi2U15ySkDyBN&t=2937

処分をして良いか

そのような場合に、処分をして良いか。これはとても難しい問題です。残る問題。真実相当性が認められない問題や公益対象事実と認められないものについては処分しても良いんじゃないかと言うことが考えられるからです。しかし、これはもう少し大きな見地から考えないといけないだろうと、処分することは出来るかもしれないけれども、それらの事実は違法な通報者探索行為によって認められたものでございます。

パワハラについて言えば先ほど申し上げましたがかなりの程度事実の部分がございました。とすると公益通報者保護法では保護されないとしても有益な事実の指摘があったと言うことがあったと考えても良いのではないかと、そういう風なことを考えると、この懲戒処分は裁量権の範囲を超えたものである。ないしは、その権利を濫用したものであると考えるのが相当だろうと言うことで懲戒処分のうち本件文書を作成配布したことを理由とする部分は効力が無いと言うのが我々の意見です。

その他に元局長が処分された理由はその他にも三つございます。ではこれらの三つの行為に対して懲戒処分を課すことは可能か、これは理屈上は可能だろうと思います。ただし違法に収集された資料に基づいて発覚したものです。これをどう考えるかと言う問題がございます。我々はかなり悩みましたけれども、発覚した非違行為は決して無視ることでは無い。違法と言う点も考えなければいけないけれども、綱紀粛正と言うことも県政を維持するためには大事な部分でもあると言うことで他の三つを理由とする懲戒処分については効力があると言う風に考えております。

以上が、我々の公益通報に対する考え方です。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=mK6Rq-G_vN918O_7&t=3044

背景と原因

背景と原因について考えたところがございます。我々は知事の個人的な資質を問題にするつもりはございません。問題はむしろ制度とか組織の問題として考えないといけないだろうと言う風に考えております。その点で一番問題になるのが、コミュニケーションギャップないし不足だろうと思います。知事は新県政推進室を作りましたが、そのメンバーを通じての意思疎通をかなり重視しました。そのメンバーとは連絡を密にしましたけれども、部長級であっても、その他の職員とはなかなかコミュニケーションが十分に取られていなかったように思います。間接的な情報伝達は直接的なものに比べまして精度が劣ります。その中で職員の中には「話を聞いてもらえない」「知事の意向が分からないと政策を前に進められない」と言う不満が蓄積されていたように思います。知事の側からも「聞いていない」「報告を受けていない」と言う風な問題が多数生じました。「聞いていない」「報告が無い」あるいは「分からない」と言うのであれば、聞けば良いわけですけれども、それより先に苛立ちが出てしまったのではないかと思います。それがパワハラの原因に繋がった可能性がありますし、こういう風な文書を見た時に、批判に耐える力の問題にも繋がったのではないかと思います。そういう意味で我々は資質と言うよりはコミュニケーションギャップと言うものを大きな問題として考えております。

兵庫県の職員の方々は総じて頑張って働きます。しかし、それは我慢し過ぎに繋がる問題があると思います。要求に応えることが出来れば次には、それに対する要求はさらに高まります。

パワハラは先ほど申し上げましたが、自分がが増して良いことではありません。これは組織を弱体化させると言うことを考えるならば、決して見逃してはならないものだろうと思います。

パワハラに甘い組織風土は改善されるべきではないだろうかと思います。

https://www.youtube.com/live/yEEcogh7b00?si=VMxLmmLpQylCCXMt&t=3222